無断リンクの話の続きと、私が無断リンク禁止派が嫌いな理由

問題は「『無断リンク禁止』が一般的になる」事ではない。」の続き。「『(無断)リンク禁止』というルールは絶対守らなければならないようになる」のがどうして問題であるか?

なぜならそれは、非常に大きな世界の変革であり、現状のまま無理に進めれば 多くの不都合が発生するからです。

「非常に大きな」世界の変革、と書きましたが、これは「逆のケース」を考えてみれば大きさの違いが良くわかります。「逆のケース」とは、つまり「元々『リンクは許可を得るのが当然』であった世界に、『ウチへは無断で自由にリンクして構わない』という人が現れ、それを守らなければならなくなる(自由度が増えているのに『守らなければならない』というのも変ですが、一応対応させる関係上。)」場合。

この場合は、人々の行動は特に変わりません。あるサイトにリンクしようと思った人は、まずは いつも通り連絡先を探します。その過程で「無断リンクOK」である事に気づいて連絡をやめるかもしれませんが、最初の行動は変わらないのです。

対して今回のケース、「元々『リンクは無断で自由にできる』世界に、『ウチへは無断でリンクしてはならない』という人が現れ、それを守らなければならなくなる」場合。

あるサイトにリンクしようと思っても、そのサイトが無断リンク禁止を掲げているサイトかどうかはすぐには判りませんから、まずはリンクポリシーを探す必要があります。…が、以前ならばリンクは無断で自由にできた以上そんな行動は必要無かったのです。前回書いた通り『極論を言えば、たとえ「無断リンク禁止!」と言う人がたった一人であろうが』、さらに言えば 実際には「無断リンク禁止!」と言う人が想像上の存在で実在しなかろうが、そのために全ての人間がリンクを行う際の行動を変えなければならないのです。

…「リンクポリシーを確認するくらい大した手間ではないじゃないか」と思われるかもしれませんが、しかし 意外にそれは面倒な事なのではないかと思います。ちょっと件の記事へのはてなブックマークコメントから引用。

# 2007年09月10日 z0rac [無断リンク][駄目] 本当にリンクの度にそのサイトを隅から隅まで読んで「無断リンク禁止」と書かれていないことを確認してる?やってなければ貴方も「無断リンク」してるんだよ。/問題を把握せずに道徳を説くのは間違い。

リンクの度にそのサイトを隅から隅まで読んで「無断リンク禁止」と書かれていないことを確認、というのは極論にすぎる印象で 流石にそこまでする必要はないと思われますが、しかし「一般的にリンクポリシーの書かれうる場所」というのはなかなか多岐にわたり、現状ではその全てを手動で確認する必要があります。

  • 「このサイトについて」的ページ
  • リンクページ
  • メインページ
  • 入り口ページ

しかも(以下長いのでこの段落は読み飛ばし推奨)、見つけた記事には戻るリンクが存在しないので URL を削ったら「入り口ページ」へ移動して、どうやらそこにはリンクポリシーが書かれていないようなので他を探すために「ENTER」をクリックしたら「注意事項をちゃんと読まないような奴は死ね!」とか言われて 入り口ページの注意事項をよく見たら「ENTERの文字は偽者で、下のほうに小さく本物の入り口があります。」と書かれているのを発見して ようやく「メインページ」に移動したら、各ページへのリンクがアイコンで示されているくせに そのアイコンが微妙で何を示しているのか判らず、ファイル名も「page1.htm」とかで判別不能、やっとの思いで「このサイトについて」に移動したところ、サイトについての情報が キャラクター同士の掛け合い漫才で書かれているという読んでて殺意を覚える構成で、しかも肝心のリンクポリシーは一番下に「└|・/勹レニ⊃レヽτ」とかページ内検索で検出不可能な文字列で書かれていたりするんです。以上、個々については完全実話。

さらに上では『「このサイトについて」的ページ』と一つにまとめましたが、実際には『アバウト』だったり『最初にお読み下さい』だったり『注意事項』だったり、「ブログ」の場合、「一番最初の記事」であったり、或いは逆に最後の記事(最新日記を表示した際に常に上に表示されるよう、遠い未来の日付)だったり。

一回のリンクでこれだけの確認をしなければなりませんし、しかも他サイトが既にリンクしている記事だからといって「このサイトはリンク自由だ」と リンクポリシーの確認をしなくて済むわけではありません。(その「他サイト」は 無断リンク禁止サイトに許可を得てリンクをしたのかもしれませんし、「他サイト」が無断で勝手にリンクしているだけかもしれませんし、さらに言えば「○○なサイトからは可、××なサイトからは不可」というリンクポリシーかもしれません。)また、以前リンク自由であることを確認したサイトの記事だからといって、その後リンクポリシーが変更されている可能性があるのでリンクの度に確認が必要です。

それからリンクというのは張る瞬間だけの話ではないでしょう。リンク自由だからとベタベタリンクをして、ある時「やっぱりリンク禁止!」と言われれば 今まで張ったリンクを全て除かねばならない――という事にもなりかねません。

www はリンクが自由なものとして作られたのであり、それ故 世界がリンクを(技術的な意味で)自由にできるようになっているこの現状で「『(無断)リンク禁止』というルールは絶対守らなければならない」と主張するのは、これだけの齟齬を起こそうとする行為なんですよ。本気で「『(無断)リンク禁止』というルールは絶対守らなければならない」ようにしたいならば、それに合わせて根本的に世界を創りなおすところから始めなければならないのです。


さて、それでも「リンクポリシーの確認は大した手間ではない」と思う人はいるかもしれません。確かに、リンクを滅多にしない人にとってはそうかもしれませんし、まして サイトや公開オンラインブックマークを持っていない人は「自分には関係無い」と思っているかもしれません。

しかし、毎日大量にリンクをする人――いわゆる「個人ニュースサイト」の管理人や、アルファブックマーカーなどと呼ばれる人たち――はどうでしょうか。そうした人たちにとっては、リンクポリシーの確認は確実に大きな負荷となります。そうなれば彼らの情報発信能力は確実に下がります。サイトを持っていないからといって「自分には関係無い」と思ってはなりません。彼らの集める情報を楽しみにしている/重宝しているという人ならば、「『(無断)リンク禁止』というルールは絶対守らなければならない」などという意見に気軽に同調してはならないのです。

私が無断リンク禁止派が嫌いな理由

無断リンク禁止派全員がそうというわけではないですが、しかし多くは「無断リンクするな!」と命令するばかりで、自分は何も「行動」しません。上で書いた通り それは非常に大きな変革であり、つまり多くの「行動」が必要だというのに。…それが嫌いな一つの理由。ボランティアのゴミ拾いに参加してたら「オラお前らちゃんと拾えー!」とか言うばかりで自分は何もしてない奴がいたらムカつくでしょう?それと同じ。

無断リンク禁止派がとるべき「行動」には、一つには「個人的に技術的手段(.htaccessとかCGIとか『リンクが嫌ならコレ使え!』とか)で対応する」というものがあります。が、無断リンク禁止派は そうした技術に明るくない人が多いせいか、そうした行動はあまり行われません。ましてや、プロトコルなどのレベルから世界を創りなおすなどできないでしょう。

しかし、技術に明るくなかろうが可能な事もあるのに、無断リンク禁止派はそれをしない。それが私が無断リンク禁止派を嫌う最大の理由です。

「技術に明るくなかろうが可能な事」…それは、「リンクポリシー表記方法の統一」。上で書いた通り、リンクポリシーが書かれうる場所があちこちあるのが問題の原因の一つです。現状の仕組みを維持しつつ リンクポリシーを絶対守らなければならないようにするなら、これは絶対必要であると言ってよいでしょう。

私の試案。

  • リンクポリシーを書くページは、そのサイトの最も上のページ(http://id.example.com/ とか http://example.com/~id/ とか http://example.com/id/ でアクセスできるページ)。
    • できれば「全てのページに」と言いたいところですが、「アクセス解析つけてるのトップページだけだから トップ以外にリンクするな!」→「全てのページにアクセス解析つければいいのでは?」→「そんなの面倒だ!」とか言っちゃう人がいるらしいので、妥協。
  • 書く文字列は厳密に指定。
    • 機械的に判別しやすくするため。
      • そもそも「機械的に判別しやすくする」なら robots.txt のリンク版みたいなのが理想ですが、ブログとかだと置けないですし。
  • この方式に基づかないリンクポリシーの表記は、守らなくてよい。(超重要)
  • また、リンクした時点でのリンクポリシーに従えばよく、その後変更があっても それ以前のリンクを解除する必要は無い。
    • 「以前からずっとリンク禁止と書いていた!」とか嘘吐く人が出たらどうしよう。 Internet Archive とかで確認できなければ無効とか?

こんなもんでどうですか。>無断リンク禁止派

さて、では何故無断リンク禁止派はリンクポリシー表記方法の統一を行わないのか?…と考えると、「リンクする側のことを全然考えていないから(だからリンクポリシー表記方法が統一されていない現状が、リンクする側にとって非常に迷惑である事に気付かない)」という理由しか思い浮かばないわけで、そうしてますます無断リンク禁止派が嫌いになるのでありました。(他に理由あります?)


こうした行動が行われ、そして現在見ているページのリンクポリシーを機械的に判断できる術が広まった(ブラウザ標準機能として搭載されるのが理想ですが、そこまで行かなくても Firefox 拡張とか。)ならば、そうした意見に同調してもいいと思いますよ。

しかし現状において、それも本人が何も行動を起こさないで「リンクポリシーは絶対守らなければならない」などと言っているようでは、断じて同調するわけにはいきません。